
- 作者: 垣谷美雨
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2019/01/22
- メディア: 文庫
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ある晩、夫が急死。これで嫁を卒業できると思いきや、舅姑や謎の女が思惑を抱えて次々押し寄せる。〝愛人〟への送金、墓問題、介護の重圧……がんじがらめな夏葉子の日々を変えたのは、意外な人物と姻族関係終了届!?
婚姻の枷に苦しむすべての人に贈る、人生逆転小説。『嫁をやめる日』を改題。〈解説・角田龍平〉
レビュー
この作者、やはり面白い。社会派エンタメ小説というジャンルをとにかく極めている。これまでは「老後資金」「住宅問題」「老老介護」「震災後の被災地」と言った社会問題を取り扱ってきた。それらは決して財政破綻や貿易戦争といったマクロな問題ではなく、我々市民にとって身近になりうる問題だ。それらを何とも大胆に、そして巧みに物語と絡めてくる。 垣谷美雨の作品には「テンプレ」感がある。大体において、機能不全のような家族が登場する。彼らは既に問題を抱えている。そこに上述のような問題を降り注ぐことで、問題を顕在化させたり悪化させたりする。そのパターンは、本作でも継承されているように思った。ただし、今作では次のように物語が始まる。
「どうして悲しくないんだろう。夫が死んだというのに、何の感情も湧いてこない。」
往年のファンとして、ここで笑わずにいられるだろうか。垣谷美雨の作品において、旦那というのは無知で無関心で愚鈍の象徴のような存在として描かれてきた。それらは嫁を苦しめる、とても厄介な存在としてのモチーフであった。しかし紛いなりにも、生命の息吹は与えられていたはずだ。それが開幕直後に死亡である。この作者、ついに旦那を亡き者にしたかと。爆笑である。
しかし、そこはさすが社会派エンタメ小説家。夫が亡くなったからこその苦難というものがとても良く描かれている。生前の愛人が登場しても、怒りを矛先が消失していること。見知らぬ人が線香を上げにくるのが大変迷惑であること。そして表面的には立派で優しい舅姑たちが、じわりじわりと元嫁が逃げないように囲い込みを開始すること。 従来のテンプレを踏襲しつつ、これまで扱ってこなかった社会問題をきちんと料理する。それでいて小説としてのクオリティは高く、スラスラと読めてしまう。やっぱり垣谷美雨は面白い!
星評価
★★★★★
本日レビューした本
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- 作者: 垣谷美雨
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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『夫の墓には入りません』〈『嫁をやめる日』を改題〉 (中公文庫)
- 作者: 垣谷美雨
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