レビュー
この本にはタイトルの通り、50人の人々が登場する。 (実際には51人だけど。作者がつい書きすぎてしまったらしいw
登場人物は、韓国人もいれば、そうでない人も登場する。 男性も女性も、子どもも年寄りも、ゲイもレズビアンも登場する。
共通点としては、大病院のある同じ街に暮らしているということ。 「袖触れ合うも他生の縁」を地で行くような、人々のゆるい繋がりが垣間見える。
お話のテーマは、家族・仕事・死生観など様々。 中には韓国の社会問題を扱かったようなお話も出てくる。
そして最後には全員集合的なお話が挿入されて終幕となる。
読み終わった所感としては、うーん、長かったw 文量は485ページしか無いのに、良くも悪くもとても長く感じた。
1人あたりのページ数は10ページ弱。とても短いんだけど、いちいちリズムが途切れるので集中力が続かなかった。
大衆オムニバスと言えば、恩田陸の「ドミノ」が好き。 ドミノに比べてしまうと、人々の繋がりは薄く、一点に向っていくようなお話ではない。 あくまで1人1人の生活や人生を見せるような本だった。
あと、これは訳者も認めているところだけど、韓国名に慣れていなくて覚えるのが難しかった。 後半で前半の人物が登場するんだけど、もはや誰だっけ…?みたいな状態になってしまったw
だけど、良作ではあった。 そりゃあこれだけの登場人物の数だから、うーん…という話もあったけど、好きな話もあった。
メモを見返したら、13人のお話が好きだったり、何かしら心に引っかかるものがあったみたいだ。 書評の最後にリストアップしておこうと思う。
特に、機能不全家族の話とか、フェミニズムのお話はハズレがなかった。 そもそも自分にとって韓国文学への入り口は「82年生まれ、キム・ジヨン」だった。 この本でもそういったお話がでてきて期待どおりだった。
ちなみに、訳者は斎藤真理子さん。この方はキム・ジヨンの訳者でもある。 キム・ジヨンを読んだ人なら分かると思うけど、訳文はとてもシンプルでサクサクと読めてしまう。
そして訳者あとがきが秀逸で勉強になった。 当時(2016年)の韓国の世の中の空気感とか、世代間のあれこれとかが分かって良かった。 むしろ、訳者あとがきを読んでから本書を読むべきだったかもしれない…w
個人的 Good ピープル
- カン・ハニョン 機能不全家庭の描写がリアル
- イ・ホ 老医者による往年の回想
- ムン・ヨンニン 見た目の自己肯定感を高めたり、残念な彼氏を振り切った女子学生のお話
- ホン・ウソプ ソゲッティングなるものの存在を知ることができた
- オ・スジ 50代でも結婚願望はないけど、死ぬまで添い遂げたいと思っている彼氏がいる素敵なお話
- キム・ハンナ 本があれば人生楽しくて、死ぬまで1人でも生きていけるという女性
- パク・イサク 努力家で素直なモテ男に好感を持った 友人としてハニョンが登場する
- ヤン・ヘリョン 優秀なゴルフキャディが社長秘書としてヘッドハンティングされるお話
- イ・ソラ エリートフェミニスト
- イム・チャンボク 在宅介護と老人ホームのお話 同じ超高齢社会として日本の空気感と似通っているものを感じた
- キム・シチョル クレーマー気質な隣人について 耐える二人への感情移入がすごかった
- チ・ヨンジ ルームメイトへのビアンのカミングアウト
- パン・スンファ 毒親である母を持つ娘のお話 妹二人だけは可愛がられる、というのもまた辛い
星評価
★★★★☆
本日レビューした本
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